酸素消費量で堆肥の腐熟度を数値化する方法

 コンポテスター(写真)を使用して酸素消費量を測定する方法です。この方法は、短時間で結果が出る、操作が簡単、結果が明確な数字で出る、誰がやっても同じ結果になるといった点で他の方法よりも優れています。

コンポテスター写真


【測定手順】

  1. 塊になっている部分を細かくほぐしながら、篩(目開き7〜10mm程度)に通す
  2. 堆肥を強く握り締め、指の間から水がにじみ出る程度に水を加える
  3. 50gを堆肥ポット(写真)に入れる
  4. 堆肥ポットをコンポテスターにセットして30分加温する
  5. 装置のスタートボタンを押す
 これで30分後に測定値が表示されます。

【コンポテスターの原理】

 堆肥の腐熟は微生物による有機物の分解で進みます。堆積初期の堆肥には、微生物が利用し易い、易分解性の有機物が多量に存在します。この有機物を微生物が活発に分解します。微生物は、分解するときに、燃焼と同様に酸素を取り込んで炭酸ガスを出す呼吸作用をすることで、大量の熱を放出します。ところが、腐熟が進んで、易分解性有機物が次第に少なくなると、微生物の活動が弱まり、呼吸作用も低下してきます。このように、堆肥の腐熟の程度、堆肥中の易分解性有機物の量および微生物の呼吸作用には直接的な相関関係があります。


デ−タ図


  このような現象にもとづき、堆肥腐熟度の簡易判定法として開発されたのが「コンポテスター」です。この測定器は、堆肥中の易分解性有機物の含量を微生物の呼吸作用、すなわち酸素消費量で測定します。酸素消費量が多ければ、まだその堆肥は未熟であり、逆に酸素消費がほとんどなければ、その堆肥には易分解性有機物がほとんどない、つまり完熟に近いと判断できます。なお、この酸素消費量の測定に使う微生物は特別なものを外から添加するようなことはせずに、その堆肥の中の微生物をそのまま使って行います。その堆肥の発酵に現に活躍している、あるいは活躍した微生物群がその堆肥にとってもっとも適していると考えられるからです。

 大気中の酸素濃度は約21%であり、微生物活動が活発な未熟な堆肥は時間とともにほぼ直線的に酸素濃度は低下してきます。この酸素濃度の下がり方(こう配)が急なほど堆肥はまだ未熟であることを意味しています。完熟に近い堆肥では酸素濃度はほとんど下がりません。測定デ−タは(デ−タ図)、仕込み直後の未熟堆肥はかなり高い酸素消費量の値ですが、34日目にはほとんど酸素消費量はゼロになり、完熟に近い堆肥になっています。なお、堆肥の腐熟度を判定するための酸素消費量は、1gの堆肥が1分間に消費する酸素の量をμg(mgの千分の一)で表すことにしています。

●コンポテスターによる試験結果
堆肥化過程における堆肥品温との関係
牛ふんおよび豚ふん主体の堆肥を調整して、堆肥の発酵温度と酸素消費量(コンポテスター測定結果)の経時変化について調べました。

この試験は小型堆肥化実験装置(容積約17L)を使用しています。
 [供試材料]
牛ふん堆肥/牛ふん:オガクズ=3:1
実施期間 8〜10月
豚ふん堆肥/豚ふん:イナワラ=2:1
実施期間 11〜1月
豚ふんの堆肥化実験では、49日目以降、品温が30℃以下に下がったため、加温装置で強制的に30℃に保存しました。
 [試験結果]
酸素消費量は、牛ふんでは56日目および豚ふんでは、49日目以降、それぞれ1および3μg/g/分で一定となり、品温もほぼ一定となりました。
作成/(財)畜産環境整備機構畜産環境技術研究所


 このように測定した堆肥の腐熟度は、もっとも腐熟が進んだ堆肥では限りなく酸素消費量はゼロ近くなり、一方、未熟の堆肥ではこの値が30近くになるものもあります。すべての堆肥はこの範囲に入り、この値が小さいほど熟度が進んでいると判断できます。切り返しても温度が上がらないような堆肥の酸素消費量は「3」以下になっています。この状態ならば、易分解性有機物が十分に少なくなっているので、畑に施用しても、堆肥成分の急激な分解による作物への害は起きないと判断できます。


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