農地還元
もっとも安価で、資源循環に即した最終的な処理の方法です。散布できる農地があれば、少しでもこの方法で処理したいものですが、留意すべき点が多いので、以下のことを留意した上で行ってください。
- 土壌や地下水の汚染
過剰に投入すると、汚染源になります。絶対に適切な量を守って散布するようにしてください。
- 臭気対策
ふん尿スラリーやメタン発酵消化液を農地に散布するときは、周辺に住宅があるところは避けるべきです。農場の周辺や運搬経路に住宅がある場合は、タンクに積み込みや運搬するときの臭気にも注意を払ってください。
インジェクターで土中に注入すれば、多少は抑えることができます。また、簡易ばっ気処理やリン酸添加(佐賀県農業技術防除センター、表1)などで、臭気のない液肥にすることができます。
- 農作物への害
植物の生育に害がないように、散布量や散布時期を適切に行う必要があります。ふん尿スラリーをそのまま散布するときは、特に障害が出やすいので注意を要しますし、雑草種子や病原菌が混入する恐れもあります。
- 成分の確認
適切な量を散布するためには、少なくとも、窒素、リン、カリの濃度を把握しておかなくてはなりません。また、ふん尿スラリーをそのまま散布するときは、沈殿して成分が不均一になっているので、よく撹拌してから散布すべきです。
- 貯留施設の確保
農地に散布できる時期は限られています。日々排出される汚水を、散布する時まで貯留しておかなくてはなりません。散布する農地にもよりますが、3〜9ヵ月分の貯留を可能にしておくべきです。貯留施設が満杯になってしまうと、過剰な散布などの不適切な処理をせざるをえなくなるので、この点はとても大切です。土地の面積や建設費の問題はあると思いますが、これが確保できないようでは、主な最終的な処理に農地還元を選択するべきではありません。
- 運搬方法の確保
液肥の場合、堆肥とは別の手段が必要です。また、重量があるので、遠方まで運搬すると、コストがかさみますし、エネルギーの無駄遣いにもなります。10km程度以内にとどめるべきでしょう。小規模経営で散布先が近場ならば、トラックにプラスチックのタンクを積んだもので十分です。散布先がもっと近いならば、そこまでポンプで送るようにすると手間がかかりません。
- 散布方法の確保
農地に均等に散布する、畝に沿って散布する、湛水した水田に流し込むなど、場面に応じた散布方法を準備する必要があります。農地に均等に散布するには、専用の装置が必要になります。小規模経営ならば、塩ビ管を使って自作することもできます。大型のタンクローリで農地に直接乗り入れる場合は、土壌が踏み固められるので、散布後に耕起する必要があるかもしれません。
- 農地の確保
農地の確保は、農地還元処理の要です。自分が所有する農地で処理しきれるならば、それにこしたことはありません。そうでない場合は、利用してもらえるように、常に営業努力をすることが大切です。自らが有機肥料の有用性をよく理解し、耕種農家の希望にできるだけ応え、周辺住民の迷惑にならないようにすることがポイントです。

農地還元は安い、でも考慮すべきことは多い
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